心地の良い巣作り=Nesting
鳥や動物、昆虫のすみかを「巣」と言いますが、人間の営みの中でも愛の巣とか、悪の巣窟なんて言い方をします。要するに、そこに寄り集まる事を巣篭りといい、巣立ちは成長の証として独立を表し、自分の力で巣作りする為に社会へ出て行く事、親元から旅立つ事を意味します。
自分の住まいを居心地よく演出することを大切にするライフスタイルを英語でnesting(ネスティング)といいます。
インテリアに凝ったり、自分の趣味に合う食器や家具をそろえて恋人や親しい友人を招き、食事をしたり余暇を共に楽しむ事をこよなく愛する暮らし方です。
動物も昆虫も人も、みんな自分たちの手で居心地の良い巣を作る事が人生の大きな仕事といえるかもしれません。それこそが、パワースポットとなりえるのではないでしょうか。
これまでの記事で、花をどんなふうに飾ると良いか、そのお手入れ方法だったり、置き場所や花材の選び方など書いてきました。では、その大前提として、花を飾るとどんな良い事が期待されるの?というところを深く掘り下げていきたいと思います。
花が持つ「調整機能」とは?花の癒し効果を医学的に証明。
花にはリラックス効果があると、誰もが自然に認識している事と思いますが、花の癒し効果を医学的に証明した、千葉大学 環境健康フィールド科学センターで行った実験をご紹介します。
(参照元https://www.mizuho-ir.co.jp/case/research/flower2012.html)
花のある部屋で過ごした場合と花のない部屋で、過ごした場合にどんな生理的変化があったかを測定し、同時にアンケート調査を行いました。オフィス従業員104名を対象に行った実験結果として、以下の様な効用を認めたそうです。
・ストレス軽減効果….職場での人間関係や仕事のストレス軽減
・緊張を和らげる効果….プレゼンや締め切り前の緊張状態の軽減
・抑うつ軽減効果….うつ病の防止
・疲労を軽減する効果….目や頭をはじめとした体の疲労感に
・混乱が軽減される効果….思考を整理したい場合など)
・活気が得られる効果….毎日のやる気アップ
高校生83名を対象に行った実験結果でも、以下の様な効用があることがわかりました。
・受験勉強のストレス緩和
・進路への不安な気持ちなどの軽減
・勉強や人間関係のイライラ防止
・部活や勉強の疲れを癒す
・毎日元気に過ごす
実際に、どのような生理的変化があったかというと、花がある部屋では体が自然とリラックスする為に交感神経の活動が減り、ストレスが緩和されリラックス効果が高まりました。
(交感神経活動25%ダウン、副交感神経活動29%アップという実験結果)
更に嬉しい結果が出ています。それは、花と緑は「調整力」を持っているという事。花や緑には、その人の体調を最適な状態にするための「調整機能」が あることが分かったそうです。
具体的には、
血圧の高い人は低くなり、低い人は高くなる。
高ストレス状態にある人はリラックスし、覚醒状態の低い人は覚醒する。
という具合に、最適な状態へと調整する力があるようです。
ある程度の緊張も必要で覚醒している事が望まれるけれど、イライラし過ぎも危険です。道路沿いに植物が植えてあるのは、ドライバーの緊張を和らげる為でもあるという話を聞いた事があります。また、アメリカでは、窓から植物が見える部屋にいる受刑者は見えない部屋にいる受刑者に比べて、病気にかかる回数が少ないという実験結果もあるそうです。
こうした様々な実証を前にすると、やはり人間は自然の一部であり、単独では生きていけない生物であるということを思い知らされます。
家に花を飾るという行為は、実は趣味という領域を超えて本能に近いのではないかとすら思えてきます。
私は仕事で花と関わっていますが、「仕事」と捉えてしまうと花はストレスの原因になるのだという経験をしました。自宅から一切の花が消えて、植物も置かなくなった時期がありました。間もなくして体を壊し、仕事どころではなくなりました。
花を身近に置く事を億劫に感じたり、水やりを忘れてしまうあたりで心のバランスを崩していたのだと気づくべきだったと今は振り返ります。
花屋へ行って花を買い、花瓶に飾るゆとりがない事もあるでしょう。家を空ける事が多かったり、植物の世話ができないほど忙しい事もあると思います。
そんな時はご近所の玄関先や庭に咲いている花に目を止めて、心にゆとりを取り戻してください。時間に余裕があれば公園で花木を愛でながら深呼吸してみてください。そして、植物を育てたり花を飾る余裕のある人たちは、自分以外の誰かが癒されているんだなと時々感じてみてください。
私たちは、地球という大きな巣に暮らしている仲間。みんなで住み、心地の良い巣作りはじめてみませんか。
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