日本の料理には欠かせない食材「昆布」。
味噌汁に、鍋物、煮物や佃煮に・・・と様々な料理に使われていますね。
素材の味を大切にする和食の中で、やさしい旨味をつけて素材の甘味を引き立ててくれる、無くてはならない食材です。
ですが、忙しい毎日に「出汁をとるのが面倒」「戻している時間がない・・・」ということで、なかなか毎日のお料理には使えない。という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
また、正しい出汁のとり方がよく分からなかったり、種類が沢山あってどれを選べばよいか分からない、といった悩みも。
実は、そんな方にこそ!昆布はおすすめしたい食材です。難しいのはイメージだけで、昆布の使い方は「置いておくだけ」「入れておくだけ」でOKですので、忙しい方の味方です。
ほんの少しの「コツ」を頭に入れておくだけで、どんなお料理にもすぐに活用できるようになります。
更に、昆布は美容に効果的な成分がたっぷりと入った優秀な「美容食材」でもあります。特に女性に不足しがちなミネラルや、お肌の潤いにも嬉しい成分が含まれています。
毎日のお料理に簡単に昆布をプラスするだけで、きれいを磨きながら和食上手になれるということ。では、昆布のきれいの秘密、種類、そして出汁のとり方から保存方法まで、見てまいりましょう。
昆布は「中庸」の食べ物
昆布は、マクロビオティックの陰陽理論では「中庸」の食べ物とされています。
簡単には「陰性」の食べ物が体を冷やしやすく、「陽性」の食べ物が体を温めやすいのですが、どちらに偏りすぎてもバランスが悪く不調になります。
ちょうどよいバランスがとれたところを「中庸」と言い、心も体もこの中庸になるように食事の陰陽の調和をとりながら食べることが大切になるのですが、昆布は「中庸」の食材です。
つまり、昆布は冷やしすぎず温めすぎない、バランスのとれた食材ということ。海藻全般がほぼ中庸であるため、毎日のお料理にコツコツと昆布などの海藻を取り入れることは、体質を調える上でもとても理にかなっているということになります。
美容食材としての昆布の力
昆布は、美味しい出汁がとれる日本の伝統食材、というだけでなく様々な美容効果を持つ食材でもあります。
水溶性食物繊維「アルギン酸」
昆布を水に浸けておいたり、煮た時に出てくるトロッとしたねばり成分は、海藻の水溶性食物繊維で「アルギン酸」や「フコイダン」などがあります。
アルギン酸は、コンブ以外にもワカメ、ヒジキ、モズクなどに含まれる多糖類です。
高血圧やコレステロールを下げるという効果の他に、満腹感を感じやすくしたり、腸内環境を整える働きもあります。腸内の不要なものを外に出してくれますので、便秘がちな方にも嬉しい成分です。
水溶性食物繊維「フコイダン」
アルギン酸とともに、海藻類に豊富に含まれる水溶性食物繊維の一つが「フコイダン」です。
コンブ、ワカメ、もずくなどの褐藻類に含まれる多糖類になります。
フコイダンは、免疫力の強化、アレルギーの低減作用、コレステロールの低下、血圧の低下、抗がん作用などの様々な効果が報告されています。
胃の様々な病気と深い関わりがあると言われる「ピロリ菌」の除去作用がある食材としても知られていますね。フコイダンは、ピロリ菌を付着してそのまま胃を通過して、体外へ出してしまいます。
また、フコイダンの美容効果として注目したいのは、抗酸化作用です。
コレステロールを低下して、血液の流れをよくする作用もあります。
食物繊維というと、腸内環境を整えたり便通の改善などのイメージが強いかもしれませんが、それだけではない美容効果も併せ持っているのです。
・抗酸化作用でアンチエイジング
・ドロドロ血を予防して血流を改善
・腸内環境を整えて便通をよく腸をきれいに
・満腹感からの食べ過ぎ防止
などなど、水溶性食物繊維の美容効果は様々に期待できます。
ミネラル
カルシウム、鉄、ナトリウム、カリウム、ヨウ素(ヨード)など豊富なミネラルを含んでいます。
毎日、野菜や果物も食べて栄養バランスがとれた食事ができている。と思っていても、意外と不足している成分がミネラルです。
ミネラルは、骨や血液を作る原料になったり、体の中の様々な化学反応に必要な成分ですので、不足すると代謝が低下したり、ホルモンバランスが乱れたりと、「病気」ではなくても不調・・・ということが起こりやすくなります。
特に不足しがちなカルシウム、鉄などもしっかりとれます。イライラしがちな方は、カルシウム不足かもしれません。また、貧血気味で疲れやすい、顔色が悪い、クマができる、などは鉄分不足の可能性もあります。
ミネラルは、毎日コツコツと補給して明るく元気な顔色を作りたいですね。
「フコキサンチン」
海藻に含まれる褐色の色素成分の一つです。脂肪が溜まることを抑えたり、また溜まった細胞を燃えやすくしてくれます。ダイエットをしたい方には、嬉しい成分です。
「グルタミン酸」
旨み成分であるグルタミン酸も、「旨味」を感じさせてくれるだけでなく、様々な美容に嬉しい作用も持っています。
グルタミン酸は、アンモニアの解毒作用や脳機能の活性化などの作用があると言われています。
さらに、グルタミン酸はアミノ酸の一種ですが、アミノ酸は角質層の潤おい成分の原料として欠かせません。昆布は、ミネラルだけでなく、アミノ酸という点でもお肌を美しく保つ役割を果たしてくれているのですね。
昆布を食べる時の注意点
このように、様々な健康・美容効果が期待できる昆布ですが、食べ過ぎた場合の害などはあるのでしょうか?
昆布は、水溶性食物繊維が豊富です。そのため、一度に過度に食べてしまうと、一時的に便が柔らかくなったり、腹痛を起こしたりすることもあります。
また、昆布はヨウ素(ヨード)が豊富です。ヨウ素は体内の代謝のために必要なミネラルではありますが、摂りすぎると甲状腺の機能低下を引き起こすと言われれいます。
ですが、どちらも体質による差もありますし、食事として普通量をいただく位では食べ過ぎにはなりません。
昆布の産地と種類
昆布を買う時に少し難しいのが、色々な種類からどれを選べばいいのか分かりづらい点です。
昆布の国内での生産はほとんどが北海道であり、全体の95%ほど。他は、青森、岩手、宮城県などが主な産地となっていますが、この産地ごとに、様々な昆布の種類、名称があります。
昆布は、日本では14属45種あると言われていますので、その種類の多さがわかりますね。
今回は、出汁とりによく利用される4種類の昆布の特徴を比較してみました。風味やコク、食感なども違いますので、使い分けもできるようになります。
真昆布
代表的な良質の昆布。肉厚でしっかりとした食感です。
【特徴と使い方】
上品な甘味をもち癖のないコクが特徴です。澄んだ出汁がとれますので、鍋物に適しています。上品な昆布の風味を楽しみたい方に。
また、肉厚なので佃煮にも適しています。出汁昆布として、また塩こぶ、佃煮などの原料にもなります。
利尻昆布
真昆布に比べ、やや硬いのが特徴。
【特徴と使い方】
味が濃く香りも高い透明な澄んだ出しがとれます。真昆布よりもキレのある風味。
澄んだ出汁がとれるため、特に会席料理にも使われます。お吸い物や鍋物、湯豆腐などに。出汁昆布として、おぼろ昆布・とろろ昆布の原料にもなります。
羅臼昆布
柔らかく、黄色味を帯びた出汁がとれます。
【特徴と使い方】
甘みやコクなど濃厚なだしが取れるので、煮物や鍋物などの出汁に適しています。しっかりと濃厚な風味を楽しみたい方に。他の昆布よりも少量でもよく出汁がとれるといわれます。
出汁昆布の他に、昆布茶、おやつ昆布、佃煮などの原料になります。
日高昆布(三石昆布)
柔らかくて早く煮えるのが特徴です。
【特徴と使い方】
一番クセがなく風味は濃くはありませんが、早く柔らかくなるため、どんなお料理にも。
柔らかくなりやすいので、煮物、おでんの具材や昆布巻などに使われます。出汁昆布の他に、佃煮や昆布巻などの原材料として幅広く使用されます。
昆布の保存方法
昆布は、湿気のあるところで保存をすると風味が落ちます。湿気が入らないようにして乾燥したところで保存します。
使いやすいように、あらかじめ5cm〜10cmなどの使いやすい大きさにカットしてから、密閉できる容器などに入れておくと便利です。長期に保存する場合には、さらに冷蔵庫に入れるとより風味を損なわずに保存できます。
昆布の美味しい出汁の取り方
昆布の出汁の取り方は、実はとっても簡単です。
ゆっくりじっくりで旨味が引き出されますので、置いておくだけ。
2つの方法がありますので、用途や時間の都合などで使い分けることができます。
1、水出し法
【材料 分量】
・昆布 3~4㎝×10㎝
・水 3カップ
【作り方】
1、昆布は、表面の汚れを固く絞った濡れ布巾等で軽く拭く。
2、ガラス瓶やプラスティックタッパーに、昆布と水を入れる。
3、冷蔵庫で一晩置いたら昆布を引き出して、出来上がり。(冬は室温で)
* 澄んであっさりとした出汁がとれます。
この後で、さらに煮出しても、より美味しい出汁になります。
2、煮出し法
【材料 分量】
・昆布 3~4㎝×10㎝
・水 3カップ
【作り方】
1、昆布は、表面の汚れを固く絞った濡れ布巾等で軽く拭く。
2、鍋に昆布と水を入れたら、30分以上置いて昆布を広げる。
3、ごく弱火にかけて、昆布の表面や鍋に小さな泡がふつふつと立ってきたら火を止める。
4、そのまま10分置いてから昆布を引き出して、出来上がり。
* 水出し法よりも、しっかりと濃い出汁がとれます。
出汁をとる時の注意点
・昆布で出汁取る時の最大のポイントは「低温」
昆布の出汁は、低温の方がよく出る。
というポイントだけをしっかり覚えれば、どんな昆布だしも美味しく取ることができます。
鰹節などは、臭みが出るので高温の湯に入れますが、昆布はその逆になります。
急いで出汁を取ろうとして、お湯にいきなり入れたり、強火で煮出したりすると、昆布が十分に広がらずに旨味や風味が出づらくなってしまいます。煮出し法の時にも、必ず水に少しつけてから。そして弱火で熱を入れていくことが大切です。
・出汁をとる時は硬水は避けて
外国産のミネラルウォーターなどに多い硬度の高い水では、素材のうまみを引き出すことができません。旨味を十分に引き出したい時には、軟水の方がおすすめです。
ですが、香りを引き出したい時には硬水の方がよく出る、と言われいていますので、どんな出汁をとりたいかで使い分けてもいいかもしれません。
・昆布はの表面はゴシゴシ洗わない
昆布の表面に、白い粉のようなものがついていることがあると思います。
これは、『マンニット』という旨味成分です。
使う前に、表面をゴシゴシときれい水洗いしてしまうと、せっかくの美味しい旨味も取れてしまいます。固く絞ったぬれ布巾などで、昆布の表面についた汚れを落とすように軽く拭いたり、さっと水洗いをして準備をします。
出汁の保存方法
使う度に出汁をとるのは、なかなか大変なことですね。
その都度使う量を作るよりも、たっぷりとまとめて出汁を取っておくと、とても便利です。
容器に入れて冷蔵庫で保存し、3日ほどで使い切るようにしましょう。また保存の際には、昆布を出しておきましょう。昆布をつけておくと、傷みやすくなります。
だしがら昆布の活用法
お出汁をとった後の昆布は、まだまだ食物繊維も栄養もたっぷりです。
捨ててしまっては勿体無い!ということで、色々な活用法があります。
ですがその前に、だしをとった後の昆布をつけておかずに引き出すのはなぜか?と言いますと、ぬめりや、旨味以外の風味や色が出るからです。
そのぬめりは、先ほど出てきました水溶性食物繊維ですので、とても大事な栄養ではあります。
よい栄養でありつつも、和食などでは料理に「ぬめりや余計な風味」が出てしまうことを避けるために、「出汁」として使いたい時には、早々に引き出してしまいます。
ということで、ぬめりや昆布特有の風味、色味などが気にならなければ、だしがらにせずに「具」として食べても、もちろんOKです。おでん、煮物などは、そのまま昆布を美味しくいただきますね。
では次に、だしがら昆布の活用法です。
一番簡単な活用法は
・冷凍庫のタッパーに溜めていって、多くなったら佃煮にする。
これならば、常備菜にもなりますし、余すところなく昆布を全ていただくことができます。
他には
・他の料理の具として使う。(切って煮物の具、スープの具など)
・カレーなどの煮込み料理の出汁、具として入れて一緒に食べる。
・他の野菜などと一緒に昆布の煮物として1品作る。
などで、次の食事の時などにすぐ使ってしまうのも便利です。
昆布を毎日のお料理プラスするだけで、お料理の格がUPするだけでなく、美容効果もプラスすることができます。作って置いておけるのも、便利で嬉しいですね。
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